ある日のサイコミ編集部…。
一人の男が、一心不乱にバットを振っている。

ユニフォーム姿でバットを振る男 
彼の名はオックン。
貫禄のある見た目とは裏腹に、弱冠26歳。

サイコミ編集部期待の若手編集である。


入社して一年足らずで
『青嵐のエース』
を立ち上げ。
『エース』をサイコミの柱に育てるとともに、
サイコミにかかわる様々な業務を担当。
『編集部の次の柱』たることを期待されている。

そんな彼が、バットを振るのには理由があった。


某草野球チームでは代打のエース! 
オックン「いったい…何が足らんのじゃ…」

オックンは、悩んでいた。

オックン「この一年、一心不乱に漫画道を突き進んできた…。
根本先生、武田先生とともに、三人で走ってきた…この8月は高校球児たちの『熱さ』に負けんために、
週2回更新までやった…」


オックン「それやのに…なんでじゃ…
なんで、アニメ化のオファー
ドラマ化のオファー
アカデミー賞芥川賞の受賞
もないんじゃ!?」

アカデミー賞は映画、芥川賞は文学…
というツッコミはさておき。
それは、若手らしい悩みだった。


オックン「なんでじゃ…なんでこんなに面白いのに、
社会現象になってないんじゃあああああ!?」

読者の皆様のおかげで
サイコミ上では十分人気を得ている
『青嵐のエース』
しかしながら世界を揺るがすヒットには至っていない…。


…苦悩しながらバットを振るオックンに光明を与えたのは、カサイ編集長だった。


カサイ「ちょっとちょっと!
編集部でバットを振り回さないでよオックン!
ユー、熱くなりすぎてるんじゃないの!?」

カサイ編集長、サニー監督のポーズで登場!(『青嵐のエース』第4話)オックン「か、カサイ編集長!!!」

オックン「なんでじゃ!なんで
『青嵐のエース』
は大ヒットしてないんじゃ!?
 メディアミックスしてないんじゃ!?
 社会現象になってないんじゃ!?
 なんでなんじゃああああああ!?
 ワイは、超人気作品の担当編集になってアニメ化に立ち会って
超モテになる予定だったんじゃあああああ!
 このままじゃ人生計画が真っ白じゃああああ!」

カサイ「…うーん。まあ、確かにユーの担当している
『青嵐のエース』
は面白いよ。
 根本先生も武田先生もいい仕事をしている。
でも、もう一押し必要だよね」

オックン「もう一押し?」

カサイ「やっぱり、マンガが大ヒットするためには
編集者の力
が必要だって言われているんだよね。
 オックンも一人前の編集者ではあるけど、まだまだ若手でしょう?
 先輩たちと、ちゃんと
コミュニケーションとってる?」

オックン「コミュニ…ケーション…?」

カサイ「サイコミにはたくさんのスポーツマンガがあるでしょ?
 『Forward!』とか
『スリースター』とか
 …僕だけじゃなくて、いろんな
先輩編集とコミュニケーションをとる
ことで、見えてくるものがあるんじゃないかな?」



オックン「先輩編集から…見えてくるもの…。
 編集長、ワイ、わかりました!ありがとうございます!」

カサイ「お、いいね!!!じゃ、僕は帰るから!頑張ってね!」

去りゆくカサイ編集長。
そして、再び残されたオックンはバットを振り続ける…。

オックン「編集としての成長…
先輩とのコミュニケーション
…そして得られる新たな気づき…!」

オックン見えた!

オックン「ワイは幼いころから野球と、スポーツと向き合ってきた…。
 対決を通じて、
千の言葉よりも深く相手を知る
ことが出来たんや…」

オックン「そして、自分よりも強い相手との戦いは
ワイを何段階も成長させてくれた
 …先輩編集…
相手にとって不足ナシや!」


その眼が鋭く光る! 
オックン「ワイは先輩たちと戦う…
戦うことがワイのコミュニケーション!
 そして、先輩たちを倒し、学びを得て成長し…
サイコミのエースになるんや!」





―後日



都内某所の卓球しながら飲める居酒屋! オックンの姿は、都内某所の卓球居酒屋にあった。
そして、彼の前にはやけに爽やかな男が一人…。


セイシュン「どうしたのオックン?
 こんなところに呼び出して…
悩みでもあるの?
僕でよければ聞くよ?


いきなり連れてこられて半笑いのセイシュン先輩 オックンが声をかけたのはセイシュン先輩。
好評連載中の卓球マンガ
『スリースター』
を担当する爽やか編集である。


卓球マンガの新たなる金字塔! 
オックン「セイシュン先輩…
ワイは、成長のためには先輩との対決が必要だと気づいたんや…
 同じスポーツマンガを編集する者として…
尊敬する先輩として…アンタを倒し、成長するんや…!」

セイシュン「対決…なるほど。一理あるね。
でも聞きたいよ…どうして僕なんだい?
 サイコミには
『Forward!』
『バリボー』
『いわかける』
 …それ以外にもたくさんのスポーツマンガがあるじゃないか?」

オックン「アンタが爽やかで、
多くの後輩から慕われているからや!」

セイシュン「そんな…理由で…?
完全な逆恨みじゃないか…!」


オックンの超理論に驚愕!(『スリースター』第4話) 

オックン「スポーツ選手の魅力と言えば、
何といっても爽やかであること!
 サイコミ編集部で一番爽やかなセイシュン先輩を倒し、ワイはその
爽やかさを学ばせてもらいます!

セイシュン「なるほど…スポーツを通じて学ぶその姿勢…
僕も見習わなければならないね!
 オックン、
君にとって必要なら、
僕が超えるべき壁になろう!

爽やかに立ちはだかるセイシュン先輩! セイシュン「それにしてもオックン…
『スリースター』
担当編集の僕に卓球勝負を挑むだなんて
 …愚の骨頂だよ。僕は
卓球については編集部一詳しい男だからね」

楽しそうにラケットを素振りする爽やかなセイシュン先輩 オックン「誰が卓球で対決すると言いましたか?」

セイシュン「!?」

オックン「…ワイは野球…
先輩は卓球…
そんな二人が対決するとしたら
これしかありません!

オックン
「バット卓球!」


バット卓球!?セイシュン「バット…卓球?なにそれ?」

オックン「見ての通り、
バットに括り付けたラケットで卓球
をするんですよ!」

説明しよう!
バット卓球とは、この日のために
オックンが考えたオリジナル競技
である!
やり方は簡単!!!

   バットに卓球ラケットをくくりつける
  ピンポン球をうちあう

   たのしい
オックン「こうみえてワイは野球で
全国大会のベンチを温めた男!
 しかも、球技全般大得意
 今日の対決のために考案したこの
バット卓球も完璧
に仕上げてきたんや!
 負ける要素がない!

セイシュン「なるほどね…
僕はまんまとオックンの得意なフィールドに
引きずり込まれたわけだ…。
 いいだろう。
先輩としてこの不利な状況を受け入れよう
 でも僕は負けないよ!
全国約35万人と言われる卓球愛好家のみんなのためにもね!」

オックン「勝負は11点先取。
 セイシュン先輩が負けたら…
ワイを『エース』と呼んでもらいましょうか!」

セイシュン「…それに意味があるのかはわからないけど、
勝負となったら負けるわけにはいかないよ!
 …オックン、
覚悟するんだね!

なんだかんだでノリノリの二人
オックン「クックック…オックックック…
バット卓球は見た目以上に距離感がつかみにくく、
初見で当てるのは至難の業!
 自滅するに決まっとる!
先攻はくれてやりますわ!



セイシュン「じゃあ、行くよ…よいしょっと!」



!?セイシュン先輩のラケットが高速で動いた! セイシュン先輩の動きは俊敏だった。
懸念された距離感もなんのその。
スリースターの主人公・司の全盛期のように、
ピンポン玉は一瞬でオックンのコートを駆け抜けた。


コート一閃!(『スリースター』第2話) 
オックン「えっ!?噓ですやん?」

オックン、あんぐり セイシュン「…なるほど。最初は戸惑ったけど、
考えてみれば、テニスと変わらない

カメラマンもびっくりの体勢から打ち返すセイシュン先輩 長い棒の先についたラケット。
確かにそれはテニスラケットと変わらない。
巧みにラケットを扱うセイシュン先輩の技術と爽やかさを前に、
オックンはまるで、父親に翻弄される子供のようだった。



…その後もオックンにいいところはなく。
最後はあっさりとオックンのラケットが空を切り…。


ああ無情
セイシュン「…これで11点…ゲームセットだね」

オックン
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ…」

苦悶するオックン…その姿は肩を壊したピッチャーにも似て…。


どうすりゃいいんだ…(『青嵐のエース』第3話) オックンの夢は、夏の卓球居酒屋に儚く消えていった…。

11-3

セイシュン先輩の勝利!

勝つ気満々でタスキを買っていたオックンセイシュン「どうだい?…自分で用意した
負け犬タスキ
を自分で巻いてる気分は?」

オックン「…苦渋としか、言いようがありません…」

セイシュン「こんなところに連れてこられて
最初は驚いたけど、楽しかったよ。
 最近ずっと家でゲームやってばかりだったからさ。
 さすがに原稿と戦ってから元寇と戦う
みたいな生活をしてるとなまっちゃってさ。
 いい運動になったなー」

オックン「ゴーストオブ●●マばっかやってたのに
この腕前…完敗や。
 そして、最後まで爽やかなその姿勢…
負けてはしもうたが、ワイ、学ばせていただきました!
 これで一つ、成長出来た気がします!」

セイシュン「そっか。役に立ったならよかったよ…!」

どこまでも爽やかなセイシュン先輩に、オックンはこうべを垂れる。

全面降伏オックン「セイシュン先輩…すいませんでした」

セイシュン「いいんだよ、オックン。
それより、これからもよろしくね!
 君がサイコミの『エース』になれる日まで、
僕も一緒に頑張るからさ!」

和平交渉二人の手が重なろうとした瞬間…。
オックンが動いた。


オックン「おっとっと…
ソーシャルディスタンスの世の中
握手は良くなかったですね…」

そう告げるとスッと自らの腕を引き…。
隠し持ったドスを抜き放ち…。
忘恩負義 


一閃!

諸行無常
セイシュン「お、オックン…?」

セイシュン先輩の腹に、
ドスは吸い込まれていった。
それはまるで、マシュマロに突き刺さったパスタのようで…。


どうして野球マンガなのにマシュマロにパスタを射すのか!?(『青嵐のエース』第23話)  

オックン「先輩は、最後まで爽やかやったと伝えておきますよ…
 悪く思わんといてください。
これも下克上
 ワイが『エース』になって、サイコミを背負っていきますんで…」

セイシュン「オッ…クン…きみって…人は…」

オックン「スポーツの世界は勝者がすべてを手にする…
ウィナーテイクスオールですわ…
 この勝利をもって、ワイはスポーツマンガ編集として
さらなる高みに向かわせていただきます…」

セイシュン「…ツ●●の…ダウンロードコンテンツが…やりたかった…ガクッ…」

会者定離
オックン「…セイシュン先輩の体にドスを突き立てた時…
ワイは爽やかさの本質を知りました…
 どれだけ窮地に追い込まれても
相手への慈悲を忘れない心…。
 それが、爽やかさやったんですね…。
ありがとうございます。
 …ワイは次のライバルを探しに行きます…
サイコミのエースとなるために…!
 セイシュン先輩…
爽やかに眠ってください…


言い残すとオックンはセイシュン先輩を倒し、
夜の街へと消えていった…。
カサイ編集長のアドバイスを曲解し、
闇に落ちたオックンは果たしてどうなってしまうのだろうか…。
そして、次にオックンから命を狙われる編集者は、
誰なのだろうか?

若手編集オックンの下克上
サイコミのエースをねらえ!~

次回へ、続く…


-さて、志半ばで倒れたセイシュン先輩に代わり、
告知
をさせていただきます。
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