ある日、漫画賞の担当をすることになったやの。
=====プレゼン会議中=====

「やっぱり今も昔もマンガといえば〝バトル〟だと思うんですよねー。なのでバトルを全面に押し出した漫画賞でいきたいわけですよボクぁ!」

うんうん。それはすごくいいんだけどさ…。
?
やのくんにとって〝バトル〟ってなに?
…?? バトルはバトルだと思うんですけど。ぶん殴ったり、魔法撃ったり…。

恋愛だって好きな人を奪い合うバトルと言えるし、職業マンガだって同僚との出世バトルを描いているものもある。殴り合うだけがバトルじゃないと思うんだよ。

たったしかに…!

やのくんの中でバトルがどんなものか固まらないとこの企画にOKは出せないかな。よってボツ!!!
======編集部=====

「う~~~ん。こうなったらゴチャゴチャ考えるより実戦の中で何か見つけた方が早い気がしてきたぞぉ!?」

そしてどうせやるなら勝たなきゃ意味がない。おれが得意とするもので勝負して勝利の美酒に酔えばアイディアも出てこようというもの……。
ならば!!大食いだぁあああああああああああ!!!!第一回サイコミフードファイト開催決定!!!
=====後日・シェーキーズ渋谷店=====

ということでやってきましたシェーキーズ渋谷店。参加者は
やの・
みつを・
オックン・
タマイの四人。カサイさんには審判をやってもらいます!


分からんけど分かった。

実は自分含めたこの4人は常日頃から大食いを豪語しているんです。今回はキッカケをもらったこともあり、そろそろ白黒つけとこうと思いまして。そのせいか、普段はコラムに出たくないって連呼してるみつをさんもノリ気です。

まあ、タマイくんとの勝負はもうついてるんですけどね…。

え⁉

…………ッ。

そう実はこの二人、第一回サイコミフードファイトの前にお寿司食べ放題で、〝第0.5回サイコミフードファイト〟を
勝手に繰り広げていたのだった。結果はみつをの勝利。寿司屋の倅(せがれ)たるタマイはそのプライドをズタズタに切り裂かれ、今回の勝負で汚名返上をはかっている。

過去の栄光をひけらかすほど小さく見えますよ。人間も
胃袋もね。

ふんっ、言ってろ。

(因縁とリベンジ。これもバトルの大事な要素だな。早速フードファイトを開いた成果が出てきたぜ!)
【選手紹介】

【ルール】
制限時間:60分
・ピザ一切れにつき1カウント。一番多く食べた人の勝ち。
・飲み物は店内メニューであれば自由に飲んでよい。
・サイドメニューも自由に食べてよいが、得点にはならない。
ここから先はガチ大食い勝負!
みんなも4人の順位を予想してコラムを読み進めてみてね!!

じゃあスタート!!!!

めちゃくちゃ色んな種類のピザがありますよ!


デザートピザもある!


パスタもフライドポテトもある!!


食べてもいいですけど。ピザ以外はノーカウントですからね。

「このクオリティのピザ食べ放題ってサイコー!昨日の夜から何も食べてこなかったから余計美味しいわー!!」

(何も食べてこなかった…?バカめ。胃袋は拡大と縮小が最も激しい内臓。食べなければ縮むのだから、絶食は大食いにとってはタブー。おれはこの時のために朝もしっかりと消化の早い食物繊維たっぷりなサラダを食してきている…)



みつをさんこんな美味しいピザを前にえらく口数が少ないですね。今何枚食べてます?

11枚

っおふぇ?

11枚

サイコミ最強のフードファイターみつを。その称号は伊達ではなかった。
決死に食らい付くタマイ。だが敗北の記憶からか、悔しさのあまり歯ぎしりする音がギシギシと店内に響く……。

(そろそろキツくなってきたけど、こっからプレッシャーかけてやるぜ!!)
!!?ここでカウントに入らないパスタを持ってくるだと!?

「食事を楽しむ!おれが今食べたいのは点数が入るピザじゃなくてパスタとコーラなんだあ!!」

「水分も極力控えるべき大食いで炭酸!?こんな常識知らずには負けられねぇ!!」
オックンの勢いにつられてペースを上げてしまうやの。
大食いのデータは詰め込んだものの、精神的な未熟さが露呈してしまった瞬間でもあった。

常識なんて知らぬ!要らぬ!考えぬ!!
激しいデッドヒートを繰り広げる二人。そして……。
……っがぁ!?
タマイさんの様子がおかしい。
ラストスパートをかける場面なのに、動きが止まった!?
タマイは今回のフードファイトで勝つために〝北海道食い倒れ旅行〟という常人では思いもつかない荒行を決行していた。
なんとそこで患った〝顎関節症〟を発症してしまったのだ…!
みつをへの闘志を燃やすあまり、奥歯を強く嚙み締めていたのもよくなかった。
そう、最高の勝負所(クライマックス)で最悪の状況に陥ってしまったのだ。

っふ。しょせんその程度です、か…。ではお先に。

みつをさんが追い上げている!しかもあれは…!


グレープフルーツ!?
ピザの脂っこさを打ち消すグレープフルーツ!もちろんあれも食べた量にはカウントされないが、口をさっぱりさせ唾液を出す手助けもしてくれる。パスタと違って腹も圧迫しない!!

…………(泣)

(追い詰められたからこそ生まれる工夫や技。これもバトルという環境の中でこそだな)



みつをさんが逆転したあああああ!!!
(ギリギリ逆転できたものの、おれももう限界だ。だがキツイ時こそ余裕の表情をキープするんだ)

イヤだ負けたくない…!動けおれの顎!動け!動け!!動いてくれよぉ!!

気合いじゃあ腹は減らないぜ。
その時、かつてみつをに味あわされた敗北の味を思い出すタマイ。
もう…!もう負けたくねぇええ!!!顎関節症で大きく開けられなくなった口。一気にピザを頬張ることができなくなったタマイ。
だが!それが功を奏した!!

あれは!少量ずつ食べることで胃への負担を軽減している。そしてリズミカルに体を揺らし食べることで、胃に入った物を強制的に下げ
“幽門”を開こうとしている!?負けたくないという想いが生んだ気迫と根性!これもバトルの中でこそ磨かれる宝石やで!!
【ところで幽門ってナニ!?】

胃袋から十二指腸につながる出口の部分のことだよ。普段は閉じていて自分の意志では開けないけど、この時タマイさんの上下に踊るような動きのおかげで開いたのかもしれないね!そのおかげで食べ物が十二指腸へ移動して、胃袋に空きができたんだ!(危ないからみんなは普通に食べようね!)


最後の最後まであがきやがる!!!
「はーい終了~~~~」

ではまず食べた量をそれぞれ発表してもらいます。


僅差で負けたぁ!

いやパスタ食べてたからや

そして一番多く食べたのは~~~~~~~~


やったああああああああああああ!!
勝者のタマイくんには
第一回サイコミフードファイト優勝者の称号を与えます!
あまりの嬉しさに両手を上げるタマイ。
それは大食いのプライドを取り戻した静かなる歓喜の雄叫びだった。

(勝った先にある名誉も立派なバトルのだいご味だよな)

「負けたぜ…タマイ。お前がナンバー1だ。」

いえ、みつをさんというライバルがいなければここまでの高みにたどりつくことはできませんでした。

「ライバルや仲間の存在」。一人ではバトルも切磋琢磨もできないもんな。

で、最下位への罰ゲームだけど。オックンにはどんなコラムであっても参加してもらう
〝コラムへの強制出演〟を命じます。

ひぇ!心霊系だけは勘弁してクレメンス…。
順位発表
オックンの強制参加が決まったコラムはどっかのタイミングで公開!お楽しみに!!

(みんなの勝ちたいって意志や、勝利への美学、ライバルの大切さも全部感じられたすばらしい勝負だった。最後のデッドヒートに残れなかったこの悔しさも含めて、これがバトルなんだ。やっと、やっと悟ったよ……。)
=====後日・サイコミ編集部=====
「
〝誰かが誰かと闘っている姿〟。それさえ見られれば後はもう何もいらない。いやいらないんじゃない、バトルを縛りたくないんです!今回もいろんな人のバトルがぶつかってフードファイトが白熱したように、
おれはいろんな人のいろんな美学やアツイ気持ちが宿ったバトルが見たい!!それが本当にやりたい漫画賞なんです!!!!!」

ようやく見つけたみたいだね。あとは好きにやるといい。

はい!今回はオールジャンルの大賞とは別に、
バトル漫画大賞を新設し、そっちも賞金を用意したいと思います!!

賞金額は?
ずばり300万円です!!!バトルの勝者にはとんでもない報酬がいるんですよ!さらに
バトル審査員賞も設けて、色んなバトル漫画が注目される機会を増やしたいと思います!そっちの賞金もそれぞれ30万円ずつ!!

ほう……。

やっぱりアツいバトル作品に応えるにはこれくらいしないと!

今回のバトルを通してサイコミ魂も分かってくれたみたいだね。

常に最高のコンテンツを最高の環境で作るのがサイコミですよね!!

こうしてサイコミ漫画賞2022は幕を開けた。
完成原稿不要でバトル漫画大賞300万円。
もちろんこれまでのオールジャンルの大賞300万円もそのままだ。
そして、サイコミトップのバトル漫画家三人によるバトル審査員賞も新設。
賞金だけではなくプロの寸評ももらえるのだ。
バトルというジャンルを描きたい人にはとんでもないチャンスがやってきた。
「大賞を奪い合う漫画賞も一つのバトル!みんなのアツい想いが詰まった作品を待ってるぜ!!」